電気化学療法(ECT)とは
電気化学療法(Electrochemotherapy:ECT)は、抗がん剤の作用を電気刺激によって局所的に高める治療法です。
抗がん剤を投与した後、腫瘍に対してごく短時間の電気パルスを加えることで、腫瘍細胞の膜に一時的な変化が起こり、薬剤が細胞内へ取り込まれやすくなると考えられています。この変化は正常な体細胞には起きませんので、腫瘍組織のみが障害されます。
この治療法は、もともとヒト医療分野で研究・臨床応用が進められてきた方法で、現在では獣医療においても一定の報告や経験をもとに実施されています。ただし、すべての腫瘍に有効な治療ではなく、適応には慎重な判断が必要です。
どのようなケースで検討されるのか
電気化学療法は、主に皮膚・皮下など体表に近い部位の腫瘍に対して検討されることがあります。
例えば、
• 手術による切除が困難な部位にある場合(口の中、目の周り、足など)
• 高齢や基礎疾患があり、侵襲の大きい治療を避けたい場合
• 出血や悪臭など、生活の質を著しく下げている腫瘍
といったケースで、治療の選択肢として検討されることがあります。
一方で、
• 体の深部に存在する腫瘍
• 骨へ広く浸潤している病変
• すでに遠隔転移が確認されている場合
などでは、電気化学療法のみでの治療は適していません。実際の適応は、診察や画像検査などを踏まえて判断します。
治療の進め方
東久留米院では、以下の流れで治療を行います。
1. 事前検査
全身状態を確認し、麻酔や治療に耐えられるかを評価します。
2. 治療当日
原則として前日夜から絶食とし、午前中に来院していただきます。
3. 麻酔・処置
全身麻酔下で抗がん剤を投与し、その後腫瘍に電気刺激を加えます。
4. 治療後の経過観察
処置時間は比較的短く、多くの場合は日帰りで対応可能です。
その後は数週間〜数か月かけて、腫瘍の変化や皮膚の状態を確認します。
メリットと注意点
メリット
• 局所治療であり、症例によっては身体的負担を抑えられる可能性があります
• 出血や疼痛、においなどによる不快症状の軽減を目的に選択されることがあります
デメリット・注意点
• 適応できる症例は限られます
• 治療部位に赤み、腫れ、かさぶた、皮膚色の変化が生じることがあります
• 治癒までに時間がかかる場合があります
• 全身麻酔および抗がん剤投与に伴う一般的なリスクがあります
利点だけでなく、起こり得るリスクも理解したうえで選択することが重要です。
よくあるご質問
Q. 効果はどの程度期待できますか?
A. 腫瘍の種類、部位、大きさ、全身状態などによって結果は異なります。効果には個体差があります。
Q. 治療中や治療後に痛みはありますか?
A. 治療は麻酔下で行います。治療後の反応には個体差があり、必要に応じて鎮痛薬を使用します。
Q. 麻酔なしで行うことはできますか?
A. 理論上は可能とされる場合もありますが、当院では安全性と苦痛軽減を重視し、無麻酔での実施は行っていません。
東久留米院における電気化学療法の位置づけ
当院では、電気化学療法を「手術や放射線治療の代わりに必ず行う治療」ではないと考えています。
外科治療、抗がん剤治療、緩和ケアなど、他の選択肢も含めて比較検討し、その子の状態やご家族の考えにとって、現実的で意味のある治療かどうかを重視します。
治療の目的、期待できる点、限界やリスクについて十分に検討したうえで、実施の可否をご相談させていただきます。
まずはお気軽にご相談ください
電気化学療法は、腫瘍治療における数ある選択肢の一つです。すべての症例に適しているわけではありませんが、条件が合えば有用な治療となる可能性があります。
「うちの子の場合はどうなのか」
「他の治療法と比べてどう違うのか」
そうした疑問がありましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。
診察を通じて、愛犬・愛猫にとって最善の方針を一緒に検討していきましょう。